私の手を握り
「ありがとう。」
小学生の頃にいじめに合い、恐怖で眠れぬ毎日でしたが、親にいじめの事を言うと悲しませると思い言えませんでした。それでも耐えられずに「死にたい」とまで思う様になってしまい勇気を出して打ち明けました。凄く悲しそうな表情をしていたのを覚えてます。両親の助けで収まりましたが、中学になっても、引きずっている僕なりの居場所を見つけるために悪い仲間とつるむようになりました。次第に警察にお世話になることを繰り返すようになり、疲れ果てた母や父の姿に自責の念が湧き出てきました。
このままではいけないと思い先輩の紹介で塗装屋になりました。厳しい世界において、輪をかけて鈍臭い私は、しがみつくように必死に続け、やがて、独立させて頂くまでになりました。不安もありましたが、両親に恩返しがしたい!と覚悟を決めてのことです。
初めて縁あった年配のご夫婦の話です。「もう最後の塗装にしたい。」と任せていただき、全身全霊、心を込めて塗装させて頂きました。現場が終わりを迎えると、私の手を握り「ありがとう。」というお言葉をいただきました。僕の手仕事でこんなにも感謝していただけるんだと目頭が熱くなり、改めて天職であると気がつくことが出来ました。
人生のやりがいに気づかせてくれたお客様に、手のかかる我が子を守ってくれた両親に、塗装仕事で恩返しし続けたい。関わる全ての人を幸せ色に塗り替えたい。これがこの仕事に掛ける私の想いです。