めげねで
生きてきた道
三人兄弟の末っ子長男として生まれ、年の離れた姉たちに可愛がられながら育ちました。暗くなる頃に帰ってくる共働きのお父さん、お母さんを楽しみに待つ幼少期でした。しかし、学校では容姿を理由にいじめられ、心が傷つく日々が続きました。誰にも相談できず、一人涙をこぼす夜もありました。大好きな家族に心配を掛けたくない。その一心で何を言われても笑って誤魔化し、自分を押し殺して、ただ笑う。地獄のような毎日でした。
高校卒業後、介護職に就いたものの倒産、次の職場も震災の津波の影響で失いました。突きつけられた現実に途方に暮れていた私に、塗装職人だった父が「手伝ってみるか」と声をかけてくれました。津波で傷んだお家を目の当たりにして呆然とする僕。その目の前で、手仕事一つでお家を直していく父。その姿に心打たれ、この道で生きていこうと決めました。先天性表皮水疱症という水泡からくる痛みと戦いながら、親方である親父に毎日怒られる、ドン臭い僕は「めげねで、がんばっぺ!」の精神で努力を重ね、初めて任された現場で「ありがとう」と言われた瞬間、涙が溢れました。今までの苦労が全て報われた気がしました。
その後30歳で独立し今に至ります。幼少期のいじめも震災も、患った難病も全てが私を育ててくれました。そして何より「ありがとう」の一言で人生を救ってくれたお客様に磨きに掛けたこの腕で、恩返しし続けたい。これがこの仕事に懸ける信念です。
