腕と心でお客様に
恩返ししたい
兄妹7人の3番目に私は生まれ、女手一つで育てられました。母は、下の子ばかりで、本当は僕も甘えたくて寂しかったのですが、言い出せませんでした。妹達が泣く姿を見て「我慢しなきゃ。」といつしか強がる癖がついてしまいました。
24歳の頃、兄の職場から電話がありました。「お兄さんが飛び降りました。」父親代わりの、大好きな兄ちゃんとの突如の別れ。家族が泣くのを見つめながらも「俺がしっかりしなきゃ。」と自分に言い聞かせました。
しばらく仕事が出来ずにいた時に、塗装業を妻から紹介されました。新鮮で楽しく、心から没頭しました。しかし、給料は低く子も生まれ、生活も苦しい時に妻から「この仕事を紹介してごめんね。」と言われました。僕は、誰にも悲しい想いをさせたくない、何より心苦しかったの鮮明に覚えています。
なんとか仕事を続ける中で、とある、おばあちゃんの家を塗装しました。「綺麗にしてくれてありがとう。頑張るんだよ!」と言っていただきました。何気ない一言に思えますが、人生に光が差し込んだように思えて目頭が熱くなり、堪えきれないものが溢れました。
その後、独立させていただき、今おもうのは、兄とのお別れの寂しさから救ってくれたのも、宝物の妻と子どもたちと笑っていられるのも、全部、塗装を通して出会ったお客様がいてくれたからです。だからこそ一生を掛けて磨いた腕と心でお客様に恩返しし続けたい。これがこの仕事にかける私の想いです。