母に自慢できる
手仕事を
奄美大島で生まれた僕は、母が女手一つで育ててくれました。兄妹3人に苦労かけさせまいと伯父の塗装屋で働き、夜も仕事をしていました。忙しいながらにも、授業参観や運動会も見に来てくれる偉大なお母さんでした。
そんな気持ちとは裏腹に中学生になると、悪い仲間とつるむようになり、来る16歳。バイクでトラックと大事故をおこし、集中治療室に入りました。2週間意識の無い状態が続きましたが、奇跡的に一命は取り留めました。目を開けると、泣きながら微笑むお母さん。その顔を見て、「なんて親不孝な息子なんだ。今度は僕が守ってあげたい。」という気持ちが沸き上がってきました。そして、母がやっていた塗装の仕事を始めることに決めました。
当然、甘い世界ではなく、親方に怒鳴られ、落ち込む毎日の繰り返し。その度に「母を守りたい。」と何とかしがみつき、がむしゃらに仕事に没頭しました。すると、ついには、1人で任せてもらえる様にまでなり、初めて担当したお客様から「どんどん綺麗になるから、帰って来るのが楽しみ。」と笑顔で言っていただきました。お客様にとっては、何気ない一言だったかも知れませんが、僕にとっては、今までの努力が報われた気がして胸が苦しいくらい熱くなった事を鮮明に覚えています。
「塗装道こそが天職だ!」そう教えてくれたお客様に恩返しし続けたい。いつまでも母に自慢できる手仕事を届け続けたい。これがこの仕事に掛ける私の想いです。