亡き父に恥じぬ
手仕事を届ける
もう一度会いたい。私にはそう想う人がいます。中学生の時に父が重い病気である事を知りました。19歳の頃には、仕事を辞める事になり一家の大黒柱を失いました。当時は、歌の道を志していましたが、〈夢を諦めるか〉〈食うために働くか〉の二択となり、自立する事が最優先だと決意し、職人の道に入りました。本当は、現実を受け止め切れずにいましたが、自分を押し殺すかの様に身を粉にして働き続けました。
そんなある日、当時、工事で入っていたお施主様から「あなたはいつも頑張っているね。でも無理はしないでね。」というお言葉を頂きました。その瞬間、自分の居場所が見つかったような得も言われぬ安堵感に包まれたのを鮮明に覚えています。この仕事こそが「天職だ」と気づかせていただきました。
その後、自分にも家族が出来て自立した頃、父が亡くなりました。数日後に母から聞いた話に言葉を失いました。実は、父は、私が生まれた頃からずっと闘病していたというのです。辛い顔など一切見せずに、いつだって笑顔でした。愛情を上手く受け取れず、ろくに親孝行もしない私にすら余計な心配をかけまいと、穏やかに振る舞い続けたその大きな愛と決意を知った時に自然と涙が溢れ出て止まりませんでした。
もう会えない。でもせめて、お父さんに恥じぬ手仕事を届け続けたい。塗装こそが天職だと教えてくれたお客様に塗装で恩返しし続けたい。これが仕事に懸ける私の信念です。
代表取締役 長谷川 学